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2009年6月10日 (水)

仁左衛門一世一代「女殺油地獄」@歌舞伎座

「片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候」とあっては見に行かざるをえないよね。でも手配が遅れたので、久しぶりの2階席さ。オペラグラス持参だった。

歌舞伎座のさよなら公演って、気合の入った演目が並ぶから楽しい。いいとこ取りを並べてると言えるかな。

今回のメイン以外で特に印象的だったのが「蝶の道行」かな。梅玉と福助の舞踊だったのだが、此の世では結ばれなかった相愛の男女が蝶になって華麗に舞い、弱って死んでゆく。その美しく、切ないことこの上なし。

「女殺油地獄」は仁左衛門が孝夫だった頃からのはまり役だというのだが、私はこの演目を敬遠していたこともあって、彼の舞台は見てなかったかもしれない。少なくとも文楽で印象的な舞台を見たことくらいしか記憶にない。

主人公の若者与兵衛は驚くほど現代的だ。油屋の息子だが、遊女に入れあげて借金はするは、対抗する者には狼藉を働くは。遠慮のある継父を軽視し、妹をたぶらかして店から金を引き出そうとする。継父や妹に次いで実母にまで暴力を働こうとしてついに継父に組み伏せられる。弱いくせに欲望に従ってやりたい放題で、無礼討ちになろうとすると平身低頭で謝り、強い者に叱られると、しゅんとうなだれて言葉もない。反省も口にする。ところが弱みを見つけると、すかさず何処までもつけ込んでくる。両親がこっそり用意してくれた大金も、巨額な借金には足りず、目の前の同業油屋には集金した金があることを知ると、もう自分を抑えられず、ついには意見をしてくれた女主人を殺してしまい、金を盗んで逃げてゆく。

片岡仁左衛門は、決してリアルな悪人には演じていない。あのたおやかな容姿のまま人をなぐり、悪態をつき、嘘でかき口説いても通じないと知るとついに刀に手をかける男。人を殺して足がガクガクになりながらも、悔やむ言葉もないままに金を懐に逃げていった。見終わった客が「怖かった」と言っていたが、多分与兵衛が今の我々の時代の人間に見えたのだろう。

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